きみは永遠の小悪魔【完】
「残念。ひとつ足りない」

『えっ』

「ふみのこと考えてたよ」


健気なところも好きだけれど、反応が可愛いからこうやって意地悪をしたくなる。

返事がないのは、頬を染めているか戸惑っているかの二択。黙り込むふみに続けて言う。


「あ、そうだ。赤いのちゃんと隠してくださいね」

『……はい?』

「キスマーク」 


思いきりつけたやつ。


《彗のお家行きたい、お家デートしましょう》とメッセージが届いた一昨日の夜。ちょうど今日が休みだったので《どーぞ》と一つ返事で答えた。

やたらそわそわしてるふみを後ろから抱きしめながら、ネトフリを見たりゲームを楽しんで時間を過ごして。

そう言う雰囲気になったので、抱こうとしたら「す、ストップ」と言われお預けを食らったんだ。三時間前のこと。

スカートに伸びた指先が現実に引き戻された。

太ったからダイエットをするだとか、もっと魅力的な子になるの、だとか懸命に伝えてくれたのはいいけど、男の家に上がっておいて、何を可愛いこと言ってるんだこの人は、と面食らってしまった。

お預けされてばりではつまらないので、赤いそれを残すことで許した。


『〜〜っ、《《%size:12px|彗のバカ》》』


電話口で、ふみの弱々しい声が鼓膜を撫でる。

知らないんだろうな。

ほんとは嫉妬深い男だってこと。
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