きみは永遠の小悪魔【完】
ボタンひとつで呼び出しに出る。ふみ、と言いかけた上から言葉が被さった。


『あ、出てくれた』


耳に流れるのは、ハリのある凛としたもので、聞き慣れた甘やかな声ではない。眉根が少しだけ真ん中に寄る。

『周子です』発音の良い声が名乗った。


『…ふみの迎え、来てもらうことできますか?』


遠慮がちにお願いをされる。

今日はお互い飲み会があるのは知っていて。お酒弱いんだから、無理しないように、昨日ふみに伝えていたのだけれど、予想通り。

《迎えに行くから、終わったら連絡して》

10分前に送信したメッセージが既読スルーだった理由がわかってしまった。

無言でいると、電話の向こうで会話を拾う。


『めっちゃ酔ってるやん。お酒、控えて言うたのに〜〜』

『もっと……飲めます』


呂律の回ってない声が微かに聞こえ、すぐ車を出すことにした。

ビール飲まなくて正解だ。
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