きみは永遠の小悪魔【完】
「ほら、帰りますよ」

「……くるしい。」

鼻先まで赤く染まったふみを抱きかかえて、車の後部座席に乗り込んだ。
「む、ぅ。くるしい」腕の中でふみがも一度呟く。負担がかからないように、ゆっくり座席に背中を当てる。


「また、アルコール3%で酔ってんですか」


前にも同じことあったなと、思い返した。

とろんと眠たげな、甘く溶けた瞳に見つめられる。


「うん。お酒飲んだら会えると思ったの」

「飲まなくても会いに行きます」


ふみの口元が微かに綻ぶ。

それから、可愛らしい唇がもぞもぞと動いたと思えば、俺の指先を握りながら「あのですね、えっと、その〜…」と、言葉を濁す。たまらなくなって、顔を覗き込んだ。「何?」と聞いて、睫毛にかかるふみの前髪を掬った。


「門限を5分過ぎたので、今日はずっと一緒にいたいです」

まじか。

腕時計に目を移す。ほんとに5分オーバーしてる。


「親にはどう説明するわけなんですか」

「友達の家に泊まるって言うから大丈夫」

「ったく。誰が悪知恵教えたんだよ」

「周子ちゃんが言ってたから」

「あー…うん。仕方ないですね」

「いつもの仕返し」


してやられた。悪戯っ子のように甘やかに笑う彼女に降参する。

「ふみ、かわいいよ」

そっと、額にキスを落とした。


【END】
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