はじめての恋はキミがいい!(マンガシナリオ)

3話

○高校・教室(放課後)

紬のモノローグ【そんなわけで、謎の契約を交わした私は、今日から鈴木くんに勉強を教えることになった】

他の生徒は誰もいない教室で、机をくっつけて座る紬と郁也。
郁也は中間テストの用紙を見せる。
全て30点〜35点で赤点ギリギリ。
郁也「いやぁーこれでも頑張ったんだよ!1教科でも赤点取ったら髪の毛坊主にするって母さんがバリカン持って脅してきてさ」
紬「ここまでギリギリなのに、一教科も赤点じゃないなんて……こんな数字狙ってもなかなか取れるものじゃないですよ!」
郁也「もしかして俺、褒められてる?」
紬「はい!」
郁也「だよな?サンキュー!!!!なんかやる気出てきた!」
黒板を使いながら勉強する紬と郁也。
× × ×
時間は過ぎて、午後6時前。
下校の放送が流れる。
紬「今日はこのくらいにしましょう。残ってる問題は家でやってみてください」
郁也「ほーい。じゃあ俺からも紬に宿題」
紬「宿題?」
郁也「言ったろ、紬を苦しめてる呪いを俺が解いてやるって。そのためには紬の協力もいるんだ」
紬はノートを出してメモを取る準備をする。
紬「お願いします!」
郁也は咳払いをして、
郁也「なりたい人の顔を探してくること!」
紬「なりたい人の顔を探してくる」
と、メモ。
郁也「呪いを解く、つまりイメチェンするにしても、具体的な目標がないと迷走するからな。まぁ勉強と一緒だ。まずは紬の理想を把握して、その上で俺が方向性を提案、実行だ!ど?」
紬「方向性の提案、実行……分かりました!」
ノートには「方向性の提案→実行!」と書き足される。


○一ノ瀬家・紬の部屋(夜)

紬「ん〜〜?」
紬は机に向かって顔を顰める。
開かれたノートには「なりたい顔」と書かれているが、その他は真っ白。


○高校・教室(翌朝)

珍しく読書ではなく机に突っ伏している紬。
郁也「おはよ」
紬が顔を上げて、
紬「(か細い声で)おはようございます」
紬の目は血走っていて、目にはくっきりとクマができている。
郁也「どうした?遅くまで勉強?」
紬「いえ……なりたい顔探しが思いのほか難題で……でも見つけてきたので、また放課後お見せしますね」
郁也「お、おう」
再び机に突っ伏して眠る紬。


○高校・教室(放課後)

教室の中には紬と郁也だけ。
紬「こんな感じはどうでしょうか……」
紬がスマホで見せた画像は、白塗りのお笑い芸人のもの。
郁也は固まる。
郁也「なるほどそうきたか……一応理由聞いてもいい?」
紬「いかに私の面影をなくすかが重要かと思いまして……リサーチを重ねた結果、これが一番理にかなってると……」
ノートを広げて、
紬「早速方針の提案をお願いします」
と、メモの体制になる。
紬がノートを開く時に、書き込まれたページがあることに気づいた郁也は、紬からノートを取り上げる。
郁也「ちょっと借りるぞ」
紬「あ、ダメです!」
紬はノートを取り返そうとするが、郁也が頭上に手を伸ばして届かない。
ノートには小顔になる方法やパーソナルカラー、似合う髪型やメイクなど紬が自力で調べた美容に関することがびっしり書かれている。
郁也「紬がなりたい自分って本当にそれなの?」
紬「……」
郁也「まさか、俺がバカにするとか思ってる?」
紬「そんなこと思ってません!」
郁也、紬の目線に高さを合わせて顔を近づける。
郁也「じゃあ俺の前では自分の気持ちに蓋すんの禁止。な」
紬、小さく頷く。
紬「本当は……シュッとしててクールビューティーな……鈴木先輩の彼女さんみたいになりたいんです」
郁也「兄貴の彼女……?あー千夏のこと?あの2人、ただの幼馴染で、別に付き合ってるとかじゃないよ」
紬「そうなんですか⁉︎私はてっきりカップルだと……だってすごくお似合いですよね!」
郁也「そうか?俺、兄貴は紬との方が合うと思うけど」
紬「な、なな何言ってるんですか!」
紬は顔を真っ赤にする。
郁也はニカッと笑って、
郁也「でも、紬の理想は分かった!すぐ実行しよう!」


○美容院(休日)

紬は鏡の前の椅子に座ってクロスをかけられる。
いつものようにメガネとマスクをしたまま。
美容師「今日はどうされますか?」
紬「(郁也からのメッセージを見ながら)前髪は眉にかかるくらい、流す感じでお願いします。後ろの髪は肩甲骨あたりで、顔周りにレイヤー……?もお願いします!」

美容師モノローグ【カワイイなぁ高校生。誰かに相談してきたのかな】
と、和む。

美容師「かしこまりました。今結構量があるかなって感じなんですけど、少し軽くしますか?あまり気にならないです?」

紬のモノローグ【えっ……でも鈴木くん確か丸顔は重くなるのがダメって言ってた】

紬「はい、軽めでお願いします」
美容師「分かりました。他に気になるところはありますか?」
紬はマスクをとって、
紬「(勇気を振り絞って)あのっ……私、丸顔がコンプレックスで。だから、丸顔が目立たないように、どうかよろしくお願いします!」
美容師「分かりました。前髪が厚すぎるとお顔が丸く見えやすいので、気をつけますね!」
紬「はい!!」


○美容院の外(休日)

髪を切り終わった紬が出てくる。
注文通りの仕上がりで、メガネはかけたままだがとても垢抜けている。
紬「……変じゃないでしょうか?」
郁也「いいじゃん!すげー似合ってる!」
紬、嬉し恥ずかしそうに笑う。
郁也「よしじゃああとは……」


○カラオケルーム(休日)
テーブルの上にメイク道具を広げ、郁也が紬にメイクをしていく。
郁也「ハイライトとシェーディングを入れて顔に立体感をもたせる。丸顔タイプの人は平べったく見えやすいからな」
紬「はい!」
紬はメイクをしてもらいながらメモを取る。
郁也「でもやり過ぎはダメな!」
紬「やり過ぎはダメ、と」
郁也「あとチークを逆三角形の範囲内で入れると顔がシュッとして見えるから。って、この前テレビで言ってた」
紬「鈴木くん本当に詳しいんですね」
郁也「俺も昔自分の顔が嫌だったんだ」
紬「なんでですか!そんな綺麗な顔なのに!」
郁也「よく女子に間違われたし、昔は背も小さかったからそのことでからかわれたんだよ」
紬「それ絶対鈴木くんに嫉妬してたんですよ。そんなの気にしなくていいです。鈴木くんは羨ましいくらい素敵です!」
郁也の手が止まり、目をパチパチさせて紬を見る。
紬「鈴木くん?」
と、郁也を覗き込む。
郁也「(ボソッと)やっぱ紬は紬だな」
紬「どうかしましたか?」
郁也「(嬉しそうに)いや。前にもそう言ってくれた子がいたんだ。その子のおかげで、今の俺がある!」

紬のモノローグ【鈴木くんはすごいなぁ。ちゃんと変わる努力をしたんだもん】

郁也「じゃあ最後の仕上げ」
郁也が紬の唇にリップを塗る。
郁也「できた!どうでしょうお客様」
郁也が紬に鏡を向けると、メイクでさらに印象が変わった紬の顔が映る。
紬は目を丸くして、
紬「すごい……!これほんとに私ですよね?」
郁也「(笑いながら)正真正銘、一ノ瀬紬さんですよ」
紬「自分の顔をこんなにしっかり鏡で見れたの久しぶりです。いつもすぐ目を逸らしちゃうので」
郁也「良かったぁーーー!」
紬「?」
郁也「実は心配だったんだ。無理やり巻き込んだようなもんだし、余計なお世話だったかなって。でも紬の反応見て安心した」
紬「鈴木くんが声をかけてくれなかったら、多分私は一生あのままだったと思います。だから本当に、ありがとうございます」
郁也「そうだ。記念に写真撮ろうぜ」
郁也がスマホを構えて自撮り。
頬がくっつきそうな距離で紬の表情は少し緊張している。
郁也「よし撮れた。明日が楽しみだな〜」
紬「明日?」
郁也「兄貴ビックリするよ」
紬「いやいやいや!これで学校に行くんですか⁉︎」
郁也「当たり前じゃん!」
紬「む、むむ無理です!調子に乗ってると思われるし、きっとみんなに笑われます……」
郁也「なんで?可愛いよ。ほんとは誰にも見せたくないくらい」
紬は顔を真っ赤にする。

紬のモノローグ【お世辞だって分かってる、分かってるけど……嬉しすぎてどうにかなっいゃいそう】

喜びを噛み締める紬。
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