恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜
「ああ。どうなのかしら。最近はお忙しいらしくて、まだお会いしていないの。きっと、あの方は『10』とか。あっても『15』とかではないかしら。だって、女嫌いの噂もあるくらいに、婚約者の私に冷たいのよ」

 自分が最高値の恋愛指数を持つイーディスは、私の婚約者が現在どの程度の恋愛指数なのかと、気になってしまっても不思議ではない。

 けれど、私たち二人はお互いの親の政略的な理由で、幼い頃から婚約している関係だし、イーディスやエミールのように恋愛をしての熱烈に好き同士の関係という訳ではない。

 親からそれを決められているから、将来結婚するだけの関係なのだ。

「けれど、リディア。あのお方は折々の贈り物も欠かさないし、三日も置かずにお手紙も来るし、一週間に一度は、何がなんでも絶対に会う機会を作ってくれるんでしょう。それって……貴女のことが、とても好きだからではないの?」

 幸せな人は周囲の人たちも、幸せにしたくなってしまうのかも知れない。

 イーディスは善良で無邪気で可愛らしく、悪意が全くない。フレイン伯爵家は裕福だし跡取り娘の彼女は大事に育てられ、性格も良く私もとても好きだ。

 だから、これは幸せな自分とそうではない私の関係を対比して嫌味を言っている訳ではないとわかっているので、ここは苦笑するしかなかった。

 目の前に居るイーディスも知っている通り、私を冷たくあしらう癖に婚約者は熱烈に好き同士のような婚約者らしいことをしてくれる。

 けれどそれは、周囲からそう見えるようにしているだけなのだ。

 私には冷たい態度を取り続けていて、実際には全く違う。

「それは……そうではないわ。きっと、あの方にとっては私との関係も仕事の内なのよ。だって、彼は体面を気にしなければならない王族ですもの」

 再度肩を竦め浮かない表情になった私を見た気の利くイーディスは、先日王都で開店した可愛らしいお菓子屋の話へと話題を変えていた。

< 10 / 140 >

この作品をシェア

pagetop