恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜
「池に落としたのは、ナターシャ・ジャイルズ公爵令嬢なんだね?」

「……そうです」

「アンドレにすぐに調べさせたけれど、ナターシャ・ジャイルズは昼のお茶会から帰宅した後、ジャイルズ公爵邸から出ていないそうだ。これについて、何か知っている?」

 レンブラント様、さすがに行動が素早い……そうよね。

 直前までの状況証拠はほぼ揃っているのだから、私を落としたのは彼女であるとすぐに辿り着いていそう。

 それを調べるために、彼は私をここに連れて来てから、すぐに席を外していたんだ。

「あの……立ち去る時に、顔が変わっていました。だから、私が彼女だと被害を訴えたとしても、無駄なのだと。あれはおそらく、彼女の能力(ギフト)なのだと思います」

「顔を変えることの出来る能力(ギフト)だと……? 今までに聞いたことがない。犯罪行為に繋がるような顔を変える能力(ギフト)など、絶対に与えられないはずだが……」

 ナターシャ様の事を聞き、レンブラント様は、思案するように顎に手を当てていた。

 けれど、彼にこうして何もかもを話す事が出来て、ほっと安心しているのも事実だ。私たち二人は、こういう話し合いが足りていなかったのだと思う。

「レンブラント様……あの」

「大丈夫だ。詳しく調査して……君の希望に添うように動くから、心配しないで。大丈夫。勝手なことは、何もしないから……」

 そして、もう一度レンブラント様に抱きしめられて、私はもうこれで何も心配はないのだとほっと息をついた。


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