恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜
 彼女はドレス姿ではなくて、城で働く使用人たちの着るメイド服を着ていた。つまり、あまり良くない何かをするつもりなのだろう。

「……ナターシャ様」

「最近はレンブラント殿下と、仲睦まじい様子ですね? 演技ですか? ……私が、邪魔をしたから?」

 目の中が昏い。

 ナターシャ様は自分の希望通りにいかなかったと、まだ彼女の中で受け止めきれてはいないようだ。

「……いいえ。ただ二人の中にあった誤解が、解けたからです。私たちは元々、仲が悪い訳ではありませんので」

「嘘よ!」

「ナターシャ様に誤解を与えたことは……深く謝罪します。けれど、私たち二人はお互いに好き合っていて、このまま結婚することを望んでいます。ですから……」

「嘘よ嘘よ嘘よ! 全部、嘘! 私を馬鹿にするなんて、許せないわ!」

 激昂した彼女が私に走り寄ろうとしたところで、近くに潜んでいた兵士が彼女を取り押さえた。

「……ジャイルズ公爵令嬢。こんなことになって、とても残念だよ」

 そして、レンブラント様も私の隣に居て、不快そうに眉を顰めていた。

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