恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜
 金切り声を上げたナターシャ様は、自分が失ってしまったものの大きさを実感するのは、ここから離れ落ち着いてからなのかもしれない。

 好きな絵を描くことが出来るなんて……素晴らしい能力だわ。きっとこれからも、楽しめたはずだ。

 こんな事をしようとしなければ、一生使えたはずの能力だったのに。

「これまでは……そういう事になっているし、婚約者の希望もあり、僕もそれを覆すつもりもない。だが、今ここに身分を偽って犯罪行為をしているという事実もある……連れて行け」

「はっ」

 数人の兵士に捕縛されて、ナターシャ様は連れて行かれてしまった。

「……大丈夫?」

 それを見送っていた私を気遣ったのか、レンブラント様は声を掛けてくれた。

「え? っ……ええ。レンブラント様の今までの私に対する冷たい態度って、単に演技で可愛いものだったんだって、今気がつきました」

 ナターシャ様に対する厳しく冷たい態度を見れば、私にはどれだけ甘かったかをわかってしまった。

「それは……そうだろうと思うよ。必死で心の中と違う事をしていたんだから……仕方ないと思うよ。会った時から、ずっと僕はリディアのことを、好きだったし」

 もごもごと呟く彼の言葉を聞けば、さっきまでナターシャ様を断罪していた人と同じだとは、とても思えなかった。




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