恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜
 これまでの多くの時間を重ね、何の衒いもなく親友と言える彼女は、私のことをとても大事に思ってくれている。それは、私にだって肌に感じて解っていた。

 だからこそ、ここでは彼女が飲み込んだだろう言葉も。



★♡◆



「リディア。それでは、帰りはくれぐれも気を付けるよう」

 馬車まで送ってくれたけれど、いつものように義務感丸出しな態度を見せるレンブラント様に、私はそっくりそのまま返すようにして、ふいっと横を向いて答えた。

「……ええ。失礼します」

 私が馬車の座席に腰掛けて車窓を見れば、レンブラント様は整った顔に珍しく変な表情を浮かべていた。

 これまでの私は感謝の言葉を述べて、良く出来た婚約者らしく微笑み去って行くところだったからだ。

 私は自分に冷たい態度をするレンブラント様のことが、好きだと思っていた。彼はベタベタせずに暑苦しくなくて、自分にはちょうど良いと。

 ……けれど、本当はそうではなかった。

 レンブラント様が女性を苦手だったり好きではなかったり、また私自身をあまり良く思ってなかったとしても、それはそれで良かったかもしれない。

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