恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜
 ……いつも通り有能だわ。アンドレ。

 私はにこにこと微笑む彼を見つめ、その笑顔を返すように微笑んだ。

 レンブラント様の侍従アンドレは黒髪の美少年で、ライエル侯爵の次男なのだ。

 爵位を継ぐ長男ではないので、優秀な頭脳を持つ彼は学ぶべき学業をすべて修めた上で、この年齢で既に働いている。

「……いいえ。まだ、会う予定はないの。アンドレ。むしろ私は、貴方に用があるのだけど」

 ここでアンドレ本人に会えたのは、本当に偶然だった。

 実はアンドレを呼んで貰おうと顔見知りの使用人を探していたら、折よく目的である彼が私へと寄って来てくれたのだから、私はとても運が良かったわ。

「は? ……私にですか?」

 背の低いアンドレは私の言葉に驚いて、目を丸くしていた。

「……ええ。私は貴方に、どうしても協力を頼みたいのよ!」

 そう言って私が彼に指差せばアンドレは何を誤解したのか、にこやかに笑い胸に手を当てた。

「ええ。構いません。レンブラント殿下のことでしょうか? そろそろ殿下のお誕生日ですし、そういった事でしたら、どうぞいくらでも私をお使いください」

< 31 / 140 >

この作品をシェア

pagetop