恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜

14 空返事(Side Rembrandt)

「レンブラント様。もうそろそろ、婚約者リディア様のお誕生日ですね」

 侍従アンドレは、良く気がつく。

 執務室で書類の山に向かっていた僕に、忘れていないのかという意味で声を掛けたらしい。

 外交問題で日々変わっていく情勢の中、情報の波に押されて忘れてしまう事も多いので、彼が確認してくれて助かったことも多い。

 とは言え、婚約者リディアの誕生日について、この僕が忘れるはずがない。

「ああ。そうだ……少し時間が空く時に、贈り物を買いに行きたいのだが」

「……商人をこちらに呼びませんか。その方が時間は短縮出来ますし」

 外出すれば護衛の手配などどうしても手間と時間がかかるので、アンドレは渋い表情になった。

「出来るだけ多くの商品の中から、彼女に喜んでもらえるものを選びたいんだ。流石に店ごと城に持って来いとは言えないだろう」

 リディアに相応しく喜んでもらえるものを自らが選んで贈りたいと言えば、アンドレは肩を竦めて頷いた。

「それは、その通りですね。装飾品はともかく、花屋は大変でしょう。では、明日一時間ほど空き時間がございますので、そこで外出の手配をしておきます」

「頼む。しかし、まるで嫌がらせのように、彼女の誕生日に会談をぶつけて来たんだな……」

 国同士の重要条約についての重要な内容だったので断れないし、先方がこの日しかないと言えば、仕事を調整せざるを得なかった。

< 70 / 140 >

この作品をシェア

pagetop