恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜
 こういった席で王族だけが集まる時間があることは、恒例だ。彼らはあまりにも多忙過ぎて、気がつけばひと月会わないことだってあるらしい。

 家族にもろくろく会えないなんて大変だけど、それが国を治めるということなのかもしれない。

「あら。ダヴェンポート侯爵令嬢……お久しぶりですわ」

 私はやけに低い声を聞いて顔を上げ、慌てて笑顔を作った。

「ナターシャ様。ごきげんよう」

 上品な縦巻きを二つに分けて頭の上部で括り、赤いリボンでまとめていた。勝ち気そうな顔は美しいけれど、その目には紛れもなく私への悪意が見える。

 彼女はナターシャ・ジャイルズ公爵令嬢で、我がダヴェンポート侯爵家よりも格上のジャイルズ公爵家のお方。

 実はレンブラント様の婚約者は、彼女が選ばれるのではないかと思われていたけれど、結局は私が選ばれたのだ。

 私は当時初対面だった彼女から睨まれてしまい、何事かと思っていたら、そういう経緯だったらしい。

 誰がどういった理由で選んだなどは、当たり前だけれど選ばれた立場の私たちに明かされる事はない。

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