恋病、発熱。〜私に冷たい婚約者、誰かに恋愛指数100みたいです〜
「だって! リディアにケーキを倒されたと知ったレンブラント殿下の怒りの表情を見れば、貴女と彼が上手くいっていないなんて思う人は居ないはずよ! それは私だけではなくて、あの場に居た全員が理解したと思うわ」

「まあ……」

 レンブラント様が怒る姿を見たことがない私は、彼女の言葉に驚いてしまった。

「状況的に考えて、あれはどう考えてもジャイルズ公爵令嬢の差し金だもの。そんなジャイルズ公爵令嬢が婚約者に成り代わりたいと望んだところで、レンブラント殿下ご本人に拒否されてしまうわ」

「……イーディスもそう思う?」

 やはり、あの状況では誰でもそう思ってしまうのだろう。

「ええ。私も駆け寄ろうかと思ったけれど、自分が騒がせたと思って振り返って皆にカーテシーをしたわね。立派だったわ。リディア」

「ありがとう。イーディス」

 咄嗟の事態で精一杯の強がりではあったけれど、イーディスに褒められてあれをして良かったと思った。

「そんなリディアを婚約者に持って、レンブラント殿下が不満に思うはずなどないと思うのに……ジャイルズ公爵令嬢も可哀想だわ。だって、これって絶対に勝ち目のない戦いだもの」

「そうかしら……わからないわ。人の気持ちなんて、変わってしまうもの」

 私の言葉を聞いて不思議そうな表情を浮かべたイーディスの頭上にある数字は『100』だ。

 けれど、エミールの時のように、みるみる下がってしまう数字だってある。当たり前のことかもしれないけれど、私はこの好感度が下がることだってあり得ると知ってしまっていた。



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