愛しい君へ


カラスが鳴く夕暮れ時。
わたしは202号室のインターホンを押した。

少し待つとドアが開き、中から顔を覗かせたのは、幼馴染で2つ年上の兄的存在でもある五藤匡。

「おう、ひより!」
「夕飯作ってきたよ!一緒に食べよ?」

わたしはそう言って、タッパーに詰め込んできた料理が入ったトートバッグを持ち上げて見せた。

匡はトートバッグを見ると、「わざわざ持ってきてくれたの?!連絡くれれば、俺から行ったのに!」と言った。

「たまには、匡の家で食べるのもいいかなぁ〜って思って!」

わたしがそう言うと、匡はわたしが持ってきたトートバッグを代わりに持ってくれ、「意外と重たいじゃん。」と言いながら、大きくドアを開き、わたしを中へ促してくれた。

「お邪魔しまーす!」

中に入ると、いつも通りのシンプルな部屋で、The男の部屋という感じだ。

匡はトートバッグをテーブルの上に乗せると、「今日の夕飯は何かなぁ〜?」とワクワクしたような口調でトートバッグの中を覗き込んだ。

わたしはトートバッグの中からタッパーを取り出し、そして蓋を開いてみせた。

「今日は野菜の肉巻きとシーザーサラダです!あと出汁巻き玉子!」

匡は開いたタッパーの中身を見ると「旨そー!」と言い、そのあとで改まったように「いつも美味しいご飯ありがとうございます。」と続けた。

「どういたしまして!さっ、冷めないうちに食べよ!」

そう言うと、わたしは白米が入ったお弁当箱と箸を匡の目の前に置いた。

匡は手を合わせ、「いただきます!」と言うと、野菜の肉巻きから口に運び「やっぱりひよりの料理はウメェわ!」と褒めてくれた。

この言葉が嬉しくて、わたしはいつも匡に料理を作ってあげたくなってしまうのだ。

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