愛しい君へ

わたしは、その言葉に家の外へ逃げようとしたが、藤崎社長に腕を掴まれ、引き寄せられた。

「君は、最終試験に合格したら、藤崎家に嫁にきてもらう。」
「何言ってるんですか?!離してください!」

そう言い、必死にジタバタ逃げようとしていると、玄関のドアが開いた。

「おい、ひより。何騒いで、、、って、お前誰?」

そう言いながら入って来たのは、匡だった。

匡は、一瞬でわたしが嫌がって騒いでいたと察知したのか、すぐにわたしに駆け寄り、「その手、離せよ。」と藤崎社長を睨み付け腕をクイッと捻った。

その痛みから藤崎社長は手を離すと、匡は自分の後ろにわたしを隠すようにして守ってくれた。

「イタタタタ、、、。随分、乱暴な人だね。」
「ひよりに手出すな。嫌がってただろ。」

藤崎社長は溜め息をつくと、スーツのポケットからスマホを取り出し、どこかへ電話をかけ始めた。

そして、「邪魔が入った。」とだけ言うとスマホを切り、ポケットの中に戻したのだ。

そのものの数分後、再び玄関のドアが開き、黒いスーツの男が2人入って来た。

その男たちは、両側から匡の腕を掴むと、家から追い出そうと匡を連れて行こうとしたのだ。

「おい!離せ!、、、っ、、ひより!」
「匡!」

黒スーツの男2人に連れ出されてしまった匡。
玄関のドアが閉まると、藤崎社長はゆっくりと玄関まで歩いて行き、ガチャっと音を立てて鍵を閉めた。

「さぁ、邪魔者は居なくなった。」

2人きりになり、静かな部屋に藤崎社長の声が響く。
わたしは恐怖で声も出ず、身体が動かなくなってしまっていた。

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