愛しい君へ
わたしは壁側を向き、背を丸めるようにして泣いた。
すると、藤崎社長が帰ってからすぐに、玄関のドアが開く音が聞こえ「ひより!」とわたしを呼ぶ匡の声が聞こえてきた。
慌てたように部屋の中に入ってくる足音は寝室の入り口で一度止まり、そしてゆっくりと近付いてくる匡の気配を背中で感じた。
匡はわたしの乱れた服を見て、さっきわたしが抵抗したときに落とした肌掛け布団を何も言わずにそっとわたしに掛けてくれた。
そして、ベッドに腰を掛けると、「くっ、、、」と悔しそうな匡の声が溢れてくるのが聞こえた。
わたしはそっと、匡の方を振り向いた。
すると、匡は泣いていた。
歯を食いしばるように涙を流していたのだ。
「匡、、、。」
わたしが力無く呼ぶと、匡はこちらを向き、悔しそうな悲しそうな複雑な表情で「ひよりを守れなかった、、、ごめん、、、。」と言った。
わたしは身体を起こすと、肌掛け布団に包まったまま匡の胸に額をつけた。
そんなわたしを匡は抱き締め、頭を撫でながら、もう片方の手で背中を擦ってくれた。
「わたし、合格って言われちゃった、、、。」
わたしが涙声でそう言うと、匡は更に強くわたしを抱き締め、「ごめん、、、ごめんな、、、。」と謝り続けたのだった。