愛しい君へ
そして、着いた場所はわたしが住むには一生無縁だと思っていたタワーマンションだった。
見上げるだけで首が痛くなる高さだ。
「こちらの22階フロアが藤崎様のご自宅でございます。」
神崎さんはそう言うと、わたしにカードキーを差し出してきた。
わたしはそれを受け取ると、カードが鍵なんだ、と初めてのカードキーにある意味ドキッとした。
神崎さんは「それでは、失礼致します。」と言うと、高級車に乗り去って行ってしまった。
見慣れぬ高級住宅街とタワーマンションを前に一人残されたわたし。
高級ホテルのようなエントランスを覗き込み、恐る恐る中へと入って行く。
すると、ガラスの両開ドアの横にカードキーを差し込むところがあり、さっき神崎さんに貰ったカードキーを差し込んでみる。
すると、分厚いガラスの両開ドアが開いた。
開いた、、、
当たり前のことかもしれないが、初めてのことでいちいち驚いてしまう。
開いたドアを潜り抜け、右に曲がると大きな扉のエレベーターがあった。
わたしは上向きの矢印を押す。
エレベーターは15階で止まっており、降りてくるまでに時間がかかり待ち時間が長かった。
やっと1階まで辿り着いたエレベーターは、大きく扉が開く。
わたしはエレベーターに乗り込むと、たくさん並ぶボタンの中から「22」を探し、そっと「22」のボタンを押した。
すると、エレベーターの扉は閉まり、ゆっくり過ぎる程の速度で上へ上へと上っていった。