愛しい君へ

すると、玲司さんが「ん?それは?」とわたしが大切そうに持つツガイのフクロウの置き物に気付いた。

「あ、これだけは大切なものなので、持ってきたんです。どこかに飾ってもいいですか?」

わたしがそう訊くと、玲司さんは優しい口調で「いいよ。好きなところに飾りなさい。」と言ってくれた。

「ありがとうございます。」
「それより、そろそろシャワーを浴びておいで。上がったらガウンを来て、寝室に来るんだよ。待ってるからね。」

玲司さんはそう言い、わたしの頬にキスをすると、寝室らしき部屋へ入って行った。

わたしはその言葉から、このあと何をされるのかを悟った。
でも、一応夫婦になってしまった以上、強く拒むことは出来ない。

わたしはツガイのフクロウの置き物をギュッと抱き締めると、それを大きなテレビが置かれている棚の空いているスペースに飾った。

そして、匡と一緒に雑貨屋さんへ行ったときのことを思い出す。
その時の記憶がまるで遠い昔のときのように感じた。

わたしは一度深呼吸をすると、シャワーを浴びに行き、玲司さんに言われた通りバスルームの棚に並んであったガウンを着て出てきた。

しかし、なかなか足が寝室に向かおうとしない。

好きでもない人に抱かれる、、、
わたしはこれからずっとその苦痛を味わっていかないといけないのか。

逃げたい気持ちを必死に抑え、わたしは玲司さんが待つ寝室へ向かうのだった。

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