愛しい君へ

「隣に失礼してもいいかな?」

わたしにそう話し掛けてきた藤崎社長。

わたしは驚きながら、「は、はい。どうぞ。」と返事をした。

藤崎社長は、わたしの左隣の椅子に腰をかけると、こちらに身体を向け、足を組んだ。

藤崎社長の登場に周りがざわつき始める。
藤崎社長は、女子社員たちから陰で「イケメン社長」と呼ばれており、藤崎社長に気に入られようと頑張る女子社員は多かった。

そんな藤崎社長が、、、なぜわたしの目の前に?

「君が、笠井ひよりさん?」

甘い声で話し掛けてくる藤崎社長。

わたしは、「は、はい。笠井ひよりです。」と答えた。

「君、その年齢で主任なんだって?頑張ってくれてるんだね。」
「ありがとうございます。」

藤崎社長は、わたしの顔を覗き込み見つめてくると思えば、下から上までも確認するように見つめ、それからテーブルに置かれたお弁当に視線を移した。

そして、「手作り弁当?」と訊いてきた。

「はい、大したものは入ってませんが、、、一応。」

わたしがそう答えると、藤崎社長は微笑み「君、合格。」と言った。
それから席を立ち、みんなの視線を集めながら立ち去って行く。

わたしと可奈子は顔を見合わせると、「合格って何?」と言い合ったのだった。

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