死亡フラグ立ち済悪役令嬢ですけど、ここから助かる方法を教えて欲しい。
 そして、振り返るその瞬間、チャールズに腰を抱かれた男爵令嬢ミゼルがニヤリとほくそ笑む表情が見えた。

 ……ああ。思い出した。待って。もしかして、ここは、前世プレイしていた乙女ゲームの世界ではない?

 周囲の人たちの顔も見覚えがあったし、初対面でも名前も聞き覚えがあったはずだわ。

 私は転生した乙女ゲームの世界で記憶を取り戻すことなく、役割としては悪役令嬢として過ごし、誰かを虐めることも破滅させることもなかったけれど、同じように記憶を持っているヒロインに陥れられた?

 嘘でしょう……記憶が戻るなら、もっと早くして欲しかった。

 私が処刑されてしまう死亡フラグは、さっき立ってしまったというのに。



◇◆◇



 城の地下にある牢は、衛生状況は良くなかった。湿っぽくてカビ臭かった。

 こんな場所に場違いな私のドレスの生地が、ゆらゆらと揺れる蝋燭の光を受けて艶めく。

 四方を囲む鉄格子は当然だけど金属製で頑丈で、それを破っての脱獄なんて考えるだけ時間の無駄になりそう。

 駄目だわ……これではもう、私は殺されてしまうのを待つだけなのね。

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