死亡フラグ立ち済悪役令嬢ですけど、ここから助かる方法を教えて欲しい。
「僕が敢えて言うことでもないと思いますけど、救いの手を選り好みしている場合ではないと思います。ヴィクトリア。見たところ、他には誰もいなくて僕の手ひとつのようですし」

 彼につられて周囲を見回しても、カビ臭い地下牢が広がるだけ。

 ……それは、そうだろう。

 もし、ここで生きる事を選ぶのならば、ナザイレの手を取るしかない。これも罠かもしれないけれど、罠でない可能性だってあるのだ。

 死亡フラグは既に立ってしまっているし、この世界で唯一私の事情を知っているのは、目の前のナザイレだけだった。

「私を……助けてくれると?」

 慎重に紡ぎ出された言葉に、ナザイレは胸に手を当てて鷹揚に頷いた。

「僕と結婚してくれるのであれば。未来の公爵夫人の座と、使いきれない程の財産と、申し分のない夫からの惜しみない愛をお約束しましょう」

 ……崖っぷちにあるけれど、悪くない取引のようにも思えた。

「求婚をお受けします。私には選択肢なんて、そもそもないようだから」

 私はゆっくりと立ち上がり、真っ直ぐにナザイレの金色の瞳を見つめた。

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