最高難易度攻略対象者の溺愛お約束ルートに変更希望です!~恋愛下手過ぎて手伝ってもらうことになった転生ヒロインですが、色々と大変で誰か助けて欲しい~
 貴族たちが集う夜会には、正装というドレスコードがある。

 私は元々平民であるため、必要ないので、そういったドレスなどは持っていない。

 けれど、乙女ゲームのエンディングである卒業パーティーには、個別ルートに入ったヒーローからドレスや装飾品を贈られることになる。

 『ここたた』は平民として生きて来た女の子が、特別な能力に目覚め、それによって王家の血筋を引くことに気がつくという、まさに、シンデレラストーリーの王道なのだ。

「……いやいや、何を言っているんだ。この僕がそうしろと言って居るんだから、必要なものは全て用意してあげよう。レオと結ばれる前祝いだよ。遠慮なく受け取ってくれ」

「そんな……ですが」

 夜会用イブニングドレスや装飾品となると、平民からすると目が飛び出るような金額に跳ね上がってしまう。

 王子様だから……買ってもらって良いのかと言われると、そうでもないような気がするし……。

「リンゼイ。僕を一体誰だと思っているの?」

 ジョヴァンニは学園の会長で王子様で、けど……ここで求められている答えは、きっとこれだ。

「この国の……王太子様です」

「そうだ。大いなる責任の元には、然るべき報酬も与えられる。君のように困っている女の子に使うのであれば、それは良い使い道だと思う。レオも嬉しい驚きに感動して、僕の友情に涙することだろう」

 ジョヴァンニにここまで言ってもらって、それを固辞する訳にはいかず私は小さく頷いた。

「あの、ジョヴァンニ先輩……ありがとうございます」

「いえいえ。これで全てが上手くいくと良いんだが」

 ジョヴァンニはどこか面白そうに言って顎に片手を置き、視線が合った私に、にっこりと微笑んだ。



< 32 / 66 >

この作品をシェア

pagetop