最高難易度攻略対象者の溺愛お約束ルートに変更希望です!~恋愛下手過ぎて手伝ってもらうことになった転生ヒロインですが、色々と大変で誰か助けて欲しい~
「懐中時計? 誕生日の贈り物か……ありがとう」

 誕生日の贈り物だと気がついたのか、レオナルドは嬉しそうだ。

 ……良かった。彼が嬉しそうだと、私も嬉しい。

「はい。あの……手紙の方も……」

 おずおずと肝心の手紙を指差した私に、レオナルドは畳まれた手紙を読んで、驚いた表情になった。

「どうして、これを先に言わない……というか、内容を読むと、言えなかった、が正しいんだな。リンゼイ」

「……はい」

 私はそう言って、何も言えなくなった。

 本当に私は恋愛が下手だし、ここで言うべき言葉なんて思いつかない。

 けど、ジョヴァンニは気持ちさえ伝えれば、レオナルドに任せれば良いって言っていた。

 実際のところ……それだけではなかった。

 これはゲーム画面を通じては、絶対にわからない感覚なのかもしれない。

 今は、肌に触れる空気さえ熱い。そんな気がする。

 じっと間近でレオナルドに見つめられて、言葉はもうなくて良いかもしれないと思った。きっと、なにもかも伝わるだろうって。

 レオナルドの事が好きだって、そういう真っ直ぐな気持ちが。

「俺も好きだった。リンゼイ。けど……」

 ジョヴァンニの事を言いかけたんだと思うけれど、レオナルドはふっと微笑んで何も言わなくなった。

 彼だって私と同じことを、思ったのかもしれない。

 見つめ合って、ただそれだけで、二人の間には食い違いそうな言葉なんて、もうここで必要ない。

 ……もう何か声で伝えるよりも、行動で示した方が早いかもしれないって。

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