聖女のいない国に、祝福は訪れない
婚約破棄・隣国へ追放・聖女の過去
――その日、一人の聖女が崖下の川へと身を投げた。
(苦しい。誰か助けて)
濁流に飲み込まれた聖女はバタバタと四肢を動かしながら必死に流れへ逆らおうとするが、満足な栄養すらも取れていないか弱き状態では、どれほど抵抗しようと思っても水の勢いには勝てない。
(どうして私だけ、こんなに苦しい思いをしなければならなかったの……?)
リエルル公爵家の娘として生まれ、厶ガルデン王国の聖女と呼ばれていたフリジアは――悲しみの中で意識を失った。
*
「けほ……っ。けほ……っ」
息苦しさで目が覚めたフリジアは、苦しそうに喉元を抑えて咳き込む。
(冷たい……)
全身びしょ濡れの彼女は、自分が下半身を浅瀬につけたまま、地面に両腕を投げ出していることに気づく。
(私、助かった……の……?)
――たとえ助かったとしても、フリジアは着の身着のままの状態だ。
長時間手足を拘束され満足な食事を与えられなかったことから体力は衰え、無一文。
頼れる人もおらず、聖女であることが露呈すれば元婚約者のフェドクガに命を奪われるだけ。
(苦しい。誰か助けて)
濁流に飲み込まれた聖女はバタバタと四肢を動かしながら必死に流れへ逆らおうとするが、満足な栄養すらも取れていないか弱き状態では、どれほど抵抗しようと思っても水の勢いには勝てない。
(どうして私だけ、こんなに苦しい思いをしなければならなかったの……?)
リエルル公爵家の娘として生まれ、厶ガルデン王国の聖女と呼ばれていたフリジアは――悲しみの中で意識を失った。
*
「けほ……っ。けほ……っ」
息苦しさで目が覚めたフリジアは、苦しそうに喉元を抑えて咳き込む。
(冷たい……)
全身びしょ濡れの彼女は、自分が下半身を浅瀬につけたまま、地面に両腕を投げ出していることに気づく。
(私、助かった……の……?)
――たとえ助かったとしても、フリジアは着の身着のままの状態だ。
長時間手足を拘束され満足な食事を与えられなかったことから体力は衰え、無一文。
頼れる人もおらず、聖女であることが露呈すれば元婚約者のフェドクガに命を奪われるだけ。