聖女のいない国に、祝福は訪れない
「リエルル公爵令嬢!」
頭を抑えて蹲るフリジアの異変を察知したセドリックが、真っ先に彼女の元へ駆けつける。
「ごめんなさい……っ」
「落ち着け!」
「私のせいで、先代聖女の加護が……!」
「母上の加護が薄れたなら、一瞬で大地が荒廃する。その前にフリジアの加護が齎されたのであれば、誰も君を責めたりしない!」
セドリックからどれほど優しい言葉をかけられたとしても。
フリジアは自分で自分を許せなかった。
「違う……っ。私は先代聖女から、この地を守護する役目を奪いたかったわけではありません……!」
「わかってる。大丈夫だ。俺はリエルル公爵令嬢の言葉を疑ったりしない」
「……どうして……?」
「俺は、君を……」
大粒の涙を流しながらフリジアがセドリックへ問い掛ける。
彼は先代聖女によく似た意志の強い瞳を彼女へ向けたが――言葉の続きが紡がれることはなかった。
「がるるう!」
教会のステンドグラスを粉砕し、唸り声を上げた狼がフリジアの襟ぐりを器用に鋭利な牙で掴むと、ズルズルと引き摺りセドリックから距離を取ったからだ。
頭を抑えて蹲るフリジアの異変を察知したセドリックが、真っ先に彼女の元へ駆けつける。
「ごめんなさい……っ」
「落ち着け!」
「私のせいで、先代聖女の加護が……!」
「母上の加護が薄れたなら、一瞬で大地が荒廃する。その前にフリジアの加護が齎されたのであれば、誰も君を責めたりしない!」
セドリックからどれほど優しい言葉をかけられたとしても。
フリジアは自分で自分を許せなかった。
「違う……っ。私は先代聖女から、この地を守護する役目を奪いたかったわけではありません……!」
「わかってる。大丈夫だ。俺はリエルル公爵令嬢の言葉を疑ったりしない」
「……どうして……?」
「俺は、君を……」
大粒の涙を流しながらフリジアがセドリックへ問い掛ける。
彼は先代聖女によく似た意志の強い瞳を彼女へ向けたが――言葉の続きが紡がれることはなかった。
「がるるう!」
教会のステンドグラスを粉砕し、唸り声を上げた狼がフリジアの襟ぐりを器用に鋭利な牙で掴むと、ズルズルと引き摺りセドリックから距離を取ったからだ。