聖女のいない国に、祝福は訪れない
聖女を愛する動物達と皇帝(セドリック)
 フリジアがアーデンフォルカ帝国に根ざすと決めた。

 それはこの地に住まう民であれば、誰もが大喜びするような出来事であったはずなのに。

 セドリックが余計な知識を彼女に与えすぎたせいで、フリジアは祝福を受ける前から深く傷つき、無事にムガルデン王国からアーデンフォルカ帝国へ移住をし終えた動物達に守護されてしまった。

「グルルルル……ッ」

 獣達は聖女が泣いていると知り、状況がわからぬまま駆けつけてきた者の方が多かったようだ。
 好戦的な狼は物騒な唸り声を上げて、セドリックを睨みつけている。

『貴様が聖女を泣かしたんだろう』

 言いがかりをつけているとしか思えぬ狼の目は鋭く釣り上がっており、言い訳を口にすれば一瞬で噛み殺されるのではないかと思うほどに。
 戦地慣れしているセドリックであっても、身の危険を感じるような状況だった。
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