聖女のいない国に、祝福は訪れない
「その……。リエルル公爵夫妻が、ムガルデン王国からやってきた動物達の最後尾に居たそうで……」
「なんだと?」
「動物達の領地侵入は無条件で許すようにとの命でしたが……」
「……公爵夫妻の様子は」
「それが、大変困惑しているようでして……」
「どんな状況だ」
「敵国の領地へ足を踏み入れるわけには行かないと公爵夫妻が国境で粘っているのですが、ともにやってきた動物達が中へ入るようにと背中を押しているようです」
「なるほど……」

 フリジアから彼女が聖女として任命された際に妹が豹変したと聞かされていたが、両親から酷い扱いを受けたとまでは耳にしていない。

(妙だな……)

 動物達はフリジアを守るために行動している。
 彼らがアーデンフォルカ帝国へ公爵夫妻を連れてきたのならば、彼女と会わせたい理由があると考えるべきだろう。

(演技の可能性もあるが……。妹やフェドクガのような性悪であれば、現段階で言うことを聞かぬ動物達に手を上げている可能性が高い)

 彼らが戸惑いながらも国境で一線を超えないようにと踏ん張っているのであれば、善良な貴族の可能性に賭けるべきだろう。
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