聖女のいない国に、祝福は訪れない
『……ないで……』
フリジアはゆっくりと目を開けた。
夢は見なかったが、鈴の音が鳴くような美しい声を聞いたような気がする。
(あれは一体、誰の声だったのか……)
何度か瞬きを繰り返して意識を覚醒させれば、フリジアの両手を誰かが握りしめていることに気づく。
しかも、片方ずつ手の感覚が異なる。
(陛下では、ない……)
ゴツゴツした大きな手と、強い力で握りしめたら折れてしまいそうな小さな指が、フリジアに触れている。
最初はセヌかと思ったが、侍女として忠実に控える女性が主の許可なく手を握りしめるわけがない。
だからフリジアは、手に触れた男女が声を揃えて彼女の名を口にした瞬間、驚愕で目を見開く羽目になった。
「フリジア」
気だるい身体を勢いよく起こした彼女は、ベッド際へ置かれた木製の椅子に、二人の夫婦が腰を下ろしていることに気づく。
(あり得ない……)
アーデンフォルカ帝国にいるはずがないのに。
夢でも見ているのかと疑いながらも男女を視界に捉えた彼女は、これが現実だと知るために両手を握り返してポツリと呟く。
フリジアはゆっくりと目を開けた。
夢は見なかったが、鈴の音が鳴くような美しい声を聞いたような気がする。
(あれは一体、誰の声だったのか……)
何度か瞬きを繰り返して意識を覚醒させれば、フリジアの両手を誰かが握りしめていることに気づく。
しかも、片方ずつ手の感覚が異なる。
(陛下では、ない……)
ゴツゴツした大きな手と、強い力で握りしめたら折れてしまいそうな小さな指が、フリジアに触れている。
最初はセヌかと思ったが、侍女として忠実に控える女性が主の許可なく手を握りしめるわけがない。
だからフリジアは、手に触れた男女が声を揃えて彼女の名を口にした瞬間、驚愕で目を見開く羽目になった。
「フリジア」
気だるい身体を勢いよく起こした彼女は、ベッド際へ置かれた木製の椅子に、二人の夫婦が腰を下ろしていることに気づく。
(あり得ない……)
アーデンフォルカ帝国にいるはずがないのに。
夢でも見ているのかと疑いながらも男女を視界に捉えた彼女は、これが現実だと知るために両手を握り返してポツリと呟く。