聖女のいない国に、祝福は訪れない
「お父様……。お母様……」

 彼らはフリジアの呼び掛けを受け、嬉しそうに口元を緩めた。

「まぁ……。フリジア……。こんなに大きくなって……」
「八年ぶりだね……。元気にしていたかい……?」

 彼女はずっと、昔のように家族みんなで暮らすのが夢だった。

 フリジアが聖女として任命されることなく、双子の姉妹が喧嘩をしながら。
 一緒に成長する。

(ニセラは嘘をつき、聖女を詐称した。もう、家族には戻れない……)

 二度と叶わぬ夢だと思っていた。

 八年前に両親と引き離されたフリジアとは異なり、ニセラはずっと親元に居たはずだ。
 彼らは姉妹の意見が別れたのならば、決まって妹の言葉を優先するような人達だった。
 だからフリジアは、両親を死んだものとして扱うようになったのだが――。

「私をまだ……娘だと、思ってくださるのですか……?」
「何言ってるの……?」
「当たり前じゃないか。離れて暮らしていても、フリジアとニセラは私達の娘だ」

 両親の言葉を耳にしたフリジアは、大粒の涙を溢しながら再会を喜んだ。
< 119 / 152 >

この作品をシェア

pagetop