聖女のいない国に、祝福は訪れない
(住み慣れた土地から引き離すのは、心が痛いけれど……)

 セドリックのような腕の立つ者が頂点に君臨すればどうにかなるかもしれないが、性根の腐った人々は力を合わせて国を豊かにするなど考えられないはずだ。

(あの国は私が手を下さずとも、そう遠くない未来に滅びる……)

 両親にあのような土地で人生を終えてほしくないと考えた彼女は、二人にある提案をした。

「陛下に、頼んでみます……」
「フリジア……っ。危険だ!」
「あの方は、悪逆非道の皇帝なのよ?」

 両親はセドリックと会話をしないまま、フリジアと顔を合わせることになったのだろう。誤解したままだと気づいた彼女は、両親へ丁寧に諭した。

「彼が本当に残虐な皇帝であれば……すでに私の命は奪われていたでしょう……」
「だが……っ」
「そうよ。フリジアは聖女で……」
「……はい。私はアーデンフォルカ帝国と、この地に住まう民を愛しています……」
「な……っ」

 両親は私がムガルデン王国でどういった扱いを受けていたか知らないようで、守護する国をアーデンフォルカ帝国に決めたと聞いて驚きを隠せないようだ。
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