聖女のいない国に、祝福は訪れない
偽聖女の生誕祭(フェドクガ)
(役立たずめ……!)

 フェドクガは憤慨していた。

『ニセラこそ、真の聖女なんですよぅ~』

 ニセラの言葉を信じて彼女の姉を始末してからと言うもの。
 ムガルデンは長雨に見舞われ、大規模な水害が各地で発生し苦しんでいた。

『ええ~? ニセラ、天気が晴れじゃなきゃ癒やしの力は使えませーん』

 聖女に助けを求める民は山程いたが、ニセラは雨に濡れるのを嫌がってその要請を拒否。毎日贅沢三昧で、騎士達を侍らせては愉悦に浸っていた。

(これではどちらが王族かなど、わかったものではない……!)

 フェドクガはフリジアを始末するべきではなかったのかもしれないと、今さらながらに後悔するが――彼女が偽物であれば、すでに新たな聖女はこの世に誕生しているはずだ。

(アーデンフォルカ帝国に聖女が生まれでもしたら、大変なことになる……!)

 彼は室内に置かれた家具を蹴りつけストレスを発散すると、鍵付きの宝箱の場所の中に閉まっておいたあるものを取り出す。

(姉よりはバカで使いやすいと思ったのが、間違いだったか……)

 フリジアは手足の自由を奪うだけで、あっと言う間に抵抗する気力を失くした。
< 127 / 164 >

この作品をシェア

pagetop