聖女のいない国に、祝福は訪れない
『聖女が根ざす地は、動物達が暮らす楽園』
獣達がアーデンフォルカ帝国へ向かって大移動を始めたのであれば――新たな聖女はすでに、あの地で誕生したと言うことだ。
「くそ……っ!」
フェドクガは部下が見ている前だと言うのに、苛立ちを隠しきれなかった。
(嘘はいつか、必ず露呈する……!)
どれほど家具を蹴飛ばしても気が収まらない彼は、ついには壁を殴り始める。
何度も拳を打ち付けるたびに真っ白な高級感あふれる壁が傷ついていく姿を目にした男は、悲鳴を上げて去っていった。
(この状況で、偽聖女の誕生日会だと!? 冗談じゃない!)
一刻も早くアーデンフォルカに誕生したと思われる聖女を始末したいのは山々だが、あの地には先代聖女の加護が残っている。
あそこで剣を振るい、命を奪うことは叶わないだろう。
(秘密裏に聖女を探し出して……。そうだ。それがいい……)
フェドクガは一瞬戸惑ったが、すぐさま別の案を思い出しほくそ笑む。
(フリジアを始末した時点で、こちらにだって十八年間の猶予がある……!)
先代聖女の加護は、次代が十八歳の誕生日を迎えるまで有効だ。
彼はそれを逆手に取り、ニセラを聖女扱いしておくと決めた。
獣達がアーデンフォルカ帝国へ向かって大移動を始めたのであれば――新たな聖女はすでに、あの地で誕生したと言うことだ。
「くそ……っ!」
フェドクガは部下が見ている前だと言うのに、苛立ちを隠しきれなかった。
(嘘はいつか、必ず露呈する……!)
どれほど家具を蹴飛ばしても気が収まらない彼は、ついには壁を殴り始める。
何度も拳を打ち付けるたびに真っ白な高級感あふれる壁が傷ついていく姿を目にした男は、悲鳴を上げて去っていった。
(この状況で、偽聖女の誕生日会だと!? 冗談じゃない!)
一刻も早くアーデンフォルカに誕生したと思われる聖女を始末したいのは山々だが、あの地には先代聖女の加護が残っている。
あそこで剣を振るい、命を奪うことは叶わないだろう。
(秘密裏に聖女を探し出して……。そうだ。それがいい……)
フェドクガは一瞬戸惑ったが、すぐさま別の案を思い出しほくそ笑む。
(フリジアを始末した時点で、こちらにだって十八年間の猶予がある……!)
先代聖女の加護は、次代が十八歳の誕生日を迎えるまで有効だ。
彼はそれを逆手に取り、ニセラを聖女扱いしておくと決めた。