聖女のいない国に、祝福は訪れない
「うんもう、フェドクガったらぁ~。ニセラをエスコートしてくれなきゃ困りますぅ~」

 遅れて誕生日会の会場に姿を見せた彼は、鼻につく香水の匂いに思わず顔を顰めた。

「私が担当しなくとも、山程パートナー候補はいるだろう」
「えへへ~。バレちゃいましたぁ?」

 あれだけ派手に男遊びを繰り返していれば、バレないと思う方がおかしいのだ。
 聖女と言う肩書きと天真爛漫な立ち振る舞いは、あっと言う間に男達を虜にする。

(まるで毒花だな……)

 おとなしい姉に、派手な行動ばかりを好む妹。
 聖女の力を二人で分け合うことなくフリジアだけに神が授けた理由は、半年間ともに暮らしただけでも手に取るように理解できた。

「ねぇ、殿下ぁ。今日はニセラの、誕生日なんですぅ。もちろん、私の望むプレゼントは、用意してくれましたよねぇ?」
「ドレス百枚、宝石五十個、目麗しい男を三十人……」
「ありがとうございます、殿下! 最高の誕生日プレゼントで、ニセラ嬉しい!」

 フェドクガは手を叩いて大喜びするニセラを、憎たらしそうに睨みつける。
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