聖女のいない国に、祝福は訪れない
(今に見てろ……)
彼が自らに強い恨みを抱いているなど知りもしない彼女は、キラキラと瞳を輝かせて果実酒片手に声を張り上げ挨拶をした。
「本日はニセラのために~。集まってくれてぇ~。ほんとーに、ありがとうございますぅ~!」
どこからどう見ても品のない喋り方を目にしたフェドクガはニセラを怒鳴りつけてやりたかったが、雨が降り頻る中貴族達を集めて強硬した大事な夜会だ。
(父上の前では、絶対に失敗できない……!)
彼はどれほど怒りを抱いたとしても、拳を握りしめぐっと耐えていたが――。
「ルム・フィルカ・アーレ。ムガルデンに、聖なる光を――」
ニセラが祝詞を間違えた瞬間、会場内の照明が一気に落とされた。
「ふぇ? やだ~。暗闇、こわーい!」
貴様のせいだと泣き真似をする聖女を怒鳴りつけてやりたい気持ちでいっぱいになったフェドクガは、月の光を頼りに行動しようと窓の外に視線を移し――アーデンフォルカの方向から光の柱が立っていることに気づく。
(あれは……)
フェドクガはその光景を、何度か目にしたことがあった。
フリジアを虐げていた際、あのような光の柱を発したあと彼女が倒れる姿を見たのだ。
彼が自らに強い恨みを抱いているなど知りもしない彼女は、キラキラと瞳を輝かせて果実酒片手に声を張り上げ挨拶をした。
「本日はニセラのために~。集まってくれてぇ~。ほんとーに、ありがとうございますぅ~!」
どこからどう見ても品のない喋り方を目にしたフェドクガはニセラを怒鳴りつけてやりたかったが、雨が降り頻る中貴族達を集めて強硬した大事な夜会だ。
(父上の前では、絶対に失敗できない……!)
彼はどれほど怒りを抱いたとしても、拳を握りしめぐっと耐えていたが――。
「ルム・フィルカ・アーレ。ムガルデンに、聖なる光を――」
ニセラが祝詞を間違えた瞬間、会場内の照明が一気に落とされた。
「ふぇ? やだ~。暗闇、こわーい!」
貴様のせいだと泣き真似をする聖女を怒鳴りつけてやりたい気持ちでいっぱいになったフェドクガは、月の光を頼りに行動しようと窓の外に視線を移し――アーデンフォルカの方向から光の柱が立っていることに気づく。
(あれは……)
フェドクガはその光景を、何度か目にしたことがあった。
フリジアを虐げていた際、あのような光の柱を発したあと彼女が倒れる姿を見たのだ。