聖女のいない国に、祝福は訪れない
「えぇ~? ニセラ、そんなことしたくないですぅ」
「できないなら貴様も姉のように地下牢へ閉じ込め、きらびやかな生活とは程遠い人生を歩ませてやる!」
「まぁ……。殿下ったら……。こわーい!」

 含みのある表情でわざとらしく泣き真似をしたニセラは、フェドクガの命令に従った騎士達によって連れ去られていく。
 彼女が目指すのはアーデンフォルカ帝国だ。

「これも、聖女の呪いか……」

 ニセラが赤子を連れ帰る確率はそう高くない。
 期待しないほうがいいだろう。

(今に見ていろ、アーデンフォルカ帝国め……)

 邪魔な女を敵国に送り出したフェドクガは、戦争を仕掛けるために水面下で準備を始めた。
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