聖女のいない国に、祝福は訪れない
「セドリック様~!」
――美しい花の咲き乱れる中庭の中心で。
長い時間を掛けてうさぎの隣で花冠を編んでいたフリジアは、二度と耳にしたくなかった甘い声を聞き青ざめる。
(どうして彼女が、ここにいて……。陛下の名を呼んでいるの……?)
恐ろしくて、とてもじゃないが振り返って顔を合わせようなどとは思えない。
母国でフリジアは、命を落としたことになっているからだ。
もし彼女が生きていると騒ぎになれば、フェドクガはなんとしてでも始末しようと企てるに違いない。
戦争になるか。
捕虜として本来の役目を果たすか。
どちらにせよ、誰にも加害されず穏やかにアーデンフォルト帝国で暮らす日々が脅かされる可能性が高い。
(絶対、彼女に私が生きていることを知られてはいけない……!)
フリジアは全身を小刻みに震わせながら、後方で紡がれる女性の声を真っ青な顔をして聞いていた。
「君は……」
「ムガルデン王国まで、ニセラの活躍を広めてくださるなんて! 光栄ですぅ~!」
「なんの話だ」
「アーデンフォルト帝国に、聖女がやってきたって話ですよ!」
フリジアが動向を気にする女性は、一人しかいない。
双子の妹。ニセラ・リエルルだ。
――美しい花の咲き乱れる中庭の中心で。
長い時間を掛けてうさぎの隣で花冠を編んでいたフリジアは、二度と耳にしたくなかった甘い声を聞き青ざめる。
(どうして彼女が、ここにいて……。陛下の名を呼んでいるの……?)
恐ろしくて、とてもじゃないが振り返って顔を合わせようなどとは思えない。
母国でフリジアは、命を落としたことになっているからだ。
もし彼女が生きていると騒ぎになれば、フェドクガはなんとしてでも始末しようと企てるに違いない。
戦争になるか。
捕虜として本来の役目を果たすか。
どちらにせよ、誰にも加害されず穏やかにアーデンフォルト帝国で暮らす日々が脅かされる可能性が高い。
(絶対、彼女に私が生きていることを知られてはいけない……!)
フリジアは全身を小刻みに震わせながら、後方で紡がれる女性の声を真っ青な顔をして聞いていた。
「君は……」
「ムガルデン王国まで、ニセラの活躍を広めてくださるなんて! 光栄ですぅ~!」
「なんの話だ」
「アーデンフォルト帝国に、聖女がやってきたって話ですよ!」
フリジアが動向を気にする女性は、一人しかいない。
双子の妹。ニセラ・リエルルだ。