聖女のいない国に、祝福は訪れない
「てっきりご存知だと思ったんですけど~。もしかして、ニセラのことを知らないのに、噂を流してくださったんですか?」
「きゅう?」
聖女が花かんむりを完成させたあと、いつまで経ってもそれを頭に飾らないからだろう。
彼女の隣にいたうさぎが不思議そうに耳をぴょこんと揺らす姿を見ながら、フリジアは何度も首を振る。
「嬉しい~! 嘘をついてまで、わたしを欲しがっているんですね!」
声を出したら。
振り返って顔を見られでもすれば――フリジアだと気づかれてしまう。
だから彼女は手にしていた花かんむりを土の上に置き、うさぎをギュッと抱きしめてじっとしていることしかできなかった。
「悪逆非道の皇帝だって言うから、中身も怖いと思ってましたけど……。そんなことなさそうで、ニセラ困っちゃーう!」
「むきゅ……」
フリジアが何も言わず震えているので、うさぎも不安になったようだ。
「大丈夫? みんなを呼ぶ?」とでも言いたそうに見上げてくる瞳と視線を合わせた彼女は、何度も首を振って息を殺した。
(早く行って……!)
――フリジアの祈りが、通じたのだろうか。
彼女の頭上に、不自然な影ができる。
「きゅう?」
聖女が花かんむりを完成させたあと、いつまで経ってもそれを頭に飾らないからだろう。
彼女の隣にいたうさぎが不思議そうに耳をぴょこんと揺らす姿を見ながら、フリジアは何度も首を振る。
「嬉しい~! 嘘をついてまで、わたしを欲しがっているんですね!」
声を出したら。
振り返って顔を見られでもすれば――フリジアだと気づかれてしまう。
だから彼女は手にしていた花かんむりを土の上に置き、うさぎをギュッと抱きしめてじっとしていることしかできなかった。
「悪逆非道の皇帝だって言うから、中身も怖いと思ってましたけど……。そんなことなさそうで、ニセラ困っちゃーう!」
「むきゅ……」
フリジアが何も言わず震えているので、うさぎも不安になったようだ。
「大丈夫? みんなを呼ぶ?」とでも言いたそうに見上げてくる瞳と視線を合わせた彼女は、何度も首を振って息を殺した。
(早く行って……!)
――フリジアの祈りが、通じたのだろうか。
彼女の頭上に、不自然な影ができる。