聖女のいない国に、祝福は訪れない
『アーデンフォルカ帝国で生まれた赤子の出生届って、王家が一括管理してるんですよねぇ?』

 あの手この手で王城への侵入を試みること三日。
 ニセラは顔立ちの整った若い騎士達を誘惑しようと目論見、そう口を滑らせた。

 どうやら彼女は、アーデンフォルカ帝国に新たな聖女が誕生したと勘違いしているようだ。

(冷静に考えれば、すぐにでもわかるはずだが……)

 フリジアが命を落としているのであれば、先代聖女の加護が十八年間ムガルデンに齎される。
 天変地異が巻き起こり、獣達が移住をするなどあり得ない。

(フリジアの生存は、彼女が彼らに立ち向かうと決めるまでは――悟られるわけにはいかないからな……)

 セドリックが誰の力も借りず、ニセラを追い返す必要があった。

「いい加減にしてくれないか」
「それはこっちの台詞ですよぅ~」

 一度目は警告。
 硬い口調で眉を顰めても、ケラケラと笑い飛ばして嫌がられていることに気づいていない様子。
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