聖女のいない国に、祝福は訪れない
 いつまで経っても彼が水場へ向かわない様子を目にした侍女に声をかけられた彼は、何度か逡巡しながらも低い声でセヌへ厳命する。

「彼女が目覚めたら、すぐに俺を呼ぶように」
「かしこまりました」

 彼はフリジアから離れるのを嫌がっていたが、渋々身体を離して立ち上がる。

(行って帰って来たら、跡形もなく消えていそうだ……)

 そんな一抹の不安を感じながら。
 セドリックは水場へ向かった。
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