聖女のいない国に、祝福は訪れない
聖女の傷と尋問
目が覚めたフリジアは、荒い息を吐き出し瞳を細める。
(悪夢のような過去を、夢に見たせい……?)
全身は汗で、びっしょりと濡れていた。
見知らぬ天井をぼんやりと見つめていた彼女は、自身がふかふかのベッドに横たわっていることに気づき、唇を噛みしめる。
(こんな寝心地のいいベッド……両親と暮らしていた時以来だわ……)
両親はフリジアに、「聖女となれば王族と同程度の贅沢な暮らしが約束されている」と語り笑顔で送り出してくれたが、現実は非情だった。
(公爵家で暮らしていたほうが、裕福に暮らせていたのに……)
豪華な食事にきらびやかなドレスを身に纏い、両親からたくさんの愛を注がれ過ごした幼少期。
そんな日々を懐かしんだフリジアは、一週間に一度しか与えられないパン、湯浴みすらも許されず毎日薄汚れたワンピース一枚のみで四肢を拘束されて過ごしていた数時間前までの状況を思い返して涙を流す。
「大丈夫ですか?」
すると、彼女に同じくらいの年頃と思われる女性が声を掛けてきた。
白と黒を貴重とした質素なドレスとエプロンを身に着けた女性は、おそらく使用人か侍女として働いている人物だろう。