聖女のいない国に、祝福は訪れない
「フェドクガ~!」

 元気いっぱいに皇太子へ飛びついた彼女は、鬼の形相でフェドクガから睨みつけられてもニコニコと笑顔を浮かべて嬉しそうに声を掛けた。

「ええい! 何日掛かっておるのだ! 赤子は見つかったのか!?」
「ふえーん。ごめんなさーい。ニセラ、ちょっとよくわかんなくてぇ……」
「そんなに地下牢へ閉じ込められたいのか!」
「でもね? フェドクガのために、とっておきの情報を仕入れたんですよぅ!」
「なんだそれは……。くだらぬ話であれば、即刻地下牢行きだからな!」

 フェドクガは怒りを露わにしながらも、ニセラの言い分を聞く気があるようだ。

(地下牢、地下牢って。ほんっと、単純すぎですぅ)

 彼女はこれ幸いと笑顔を深めると、彼にある情報を齎した。
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