聖女のいない国に、祝福は訪れない
「セドリックって、悪逆非道の皇帝じゃないみたいなんですぅ!」
「忌々しい男の名を、私の前で口に出すな!」
「きゃあ! お、怒っちゃ駄目ですってば! そのぅ。彼って、すっごく聖女に入れ込んでいるみたいでぇ……」
「あの男の出自を知っていれば、そんなのは調べなくともすぐにわかることだろう! 一週間も敵国をふらついておきながら、その程度の情報しか持ってこられなかったのか!?」

 ――だが、ニセラの情報はフェドクガの怒りを燃え上がらせるだけで……。
 彼女のそばにいた騎士達は、その身かわいさに悲鳴を上げて去って行った。

(んもう、厶ガルデン王国には根性なししかいないんですからぁ~)

 ニセラは危機的状態に陥っているにもかかわらず、冷静さを失っていない。

(こうなったら、奥の手を使うしかないですぅ)

 彼女は話し方こそ何も考えていないように思えるが、それはあくまで他人を油断させるための罠であった。
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