聖女のいない国に、祝福は訪れない
「聖女と私の子が誕生するなど、夢のようだ……! これは盛大に祝わなくては!」

 大喜びしている彼はすっかり忘れている。
 聖女を排出した国に、連続してその資格を持つ娘が生まれるわけがないと言うことを。

 ――聖女は王族のように、代々高貴なる血筋が受け継がれるわけではない。
 神に愛されし愛し子がその資格を持つと言うだけだ。

(私生児を適当に見繕って、息子を出産したことにしておけば……。私の安全は守られるはずですぅ)

 先程までの怒りをすっかり忘れて上機嫌になった彼は、手を叩いて騎士達を呼び寄せる。

「皆の者! 盛大な宴の準備を!」
「し、しかし……。長雨や雷雨が……」
「ニセラ! 今すぐ天候を変化させよ!」

 二重人格なのではと疑うほど気性の荒いフェドクガにいつ怒鳴られるかと怯える者達の態度を、普段であれば気に食わないと怒り狂って手を上げていたが……。
 今日の彼は相当機嫌がいいようで、ニセラが偽聖女であることも忘れて命令した。
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