聖女のいない国に、祝福は訪れない
「んー。妊娠中は、うまく聖女の力を使えないみたいなんですよねぇ……」
「なんだと? ならば、出産したら長雨や雷鳴が轟くことはないのか!」
「安定期に入ったら、大丈夫だと思いまーす!」

 聖女が命を落とした直後。
 半年間は神が愛し子の死を痛み、その娘が暮らしていた地は長雨や雷鳴に悩まされる。

(あの子が亡くなっていれば、も嘘ろそろ加護が切れるはず。急速にこの地は衰える。でも……生きていれば……どうなるんだろ?)

 聖女の加護が失われた地は、荒れ果てると言うのは有名な話だ。
 豊かに実っていた作物が枯れ、日照りが多くなり、満足な飲水すらも確保できなくなる。

(ま、どうでもいいですよねぇ。王族の衣食住は、国が傾いたとしても確保されてるはずですもん)

 彼の血を引いていない子どもを王族の子だと偽り盾にしたことさえバレなければ、ニセラはどこにだって行けるのだから……。

(ぜーんぶニセラの計画通りってことでーす!)

 彼女は満面の笑みを浮かべると、愛おしそうに何も宿っていない腹部を撫でた。
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