聖女のいない国に、祝福は訪れない
「……陛下のことは、とても信頼しています……」
「だったら……」
「私が本音を吐露すれば、そのおぞましさに恐れ慄き、触れることすら嫌悪感を抱くでしょう……」
「あり得ない」
フリジアはセドリックが思っているような女性ではないのだ。
彼は自身の母親に彼女を重ねているようだが――その本心を知れば、淡い恋心だけではなく先代聖女の想い出までも穢されたと怒り狂うかもしれない。
「私が君に向ける愛を、疑っているのか」
「……いいえ。受け入れているからこそ、失望させたくないのです……」
この先の言葉を口にすることに戸惑うフリジアは、ゆっくりと目を閉じた。
「聞かせてくれないか」
「きっと、後悔します……」
「俺は君の、すべてを知りたい」
窓の外では晴れているのにバケツをひっくり返した雨が大地を濡らし、遠くからは雷鳴が轟いている。
これらはすべて、彼女が心を乱している証拠だ。
(陛下は卑怯だ……)
彼がすべてを晒すことなどあり得ないのに、フリジアだけがそれを強要されている。
促すのは簡単だが――それに応えるのが難しいことを、彼は理解していないのかもしれない。
「だったら……」
「私が本音を吐露すれば、そのおぞましさに恐れ慄き、触れることすら嫌悪感を抱くでしょう……」
「あり得ない」
フリジアはセドリックが思っているような女性ではないのだ。
彼は自身の母親に彼女を重ねているようだが――その本心を知れば、淡い恋心だけではなく先代聖女の想い出までも穢されたと怒り狂うかもしれない。
「私が君に向ける愛を、疑っているのか」
「……いいえ。受け入れているからこそ、失望させたくないのです……」
この先の言葉を口にすることに戸惑うフリジアは、ゆっくりと目を閉じた。
「聞かせてくれないか」
「きっと、後悔します……」
「俺は君の、すべてを知りたい」
窓の外では晴れているのにバケツをひっくり返した雨が大地を濡らし、遠くからは雷鳴が轟いている。
これらはすべて、彼女が心を乱している証拠だ。
(陛下は卑怯だ……)
彼がすべてを晒すことなどあり得ないのに、フリジアだけがそれを強要されている。
促すのは簡単だが――それに応えるのが難しいことを、彼は理解していないのかもしれない。