聖女のいない国に、祝福は訪れない
「私はフェドクガ・ムガデンを、憎んでいます……」
それは彼女が誰にも言えずに、胸の奥底に沈めていた本心だ。
「私が受けた苦しみを味わわせるだけでは、満足できません……。自ら命を断つことのできない状態で、耐え難い苦痛を一生体感し続けてほしい……」
フェドクガに何をされたかまでを正直に打ち明ける勇気はなかったが、普段自信なさげに下を向いてばかりだったフリジアと同一人物など思えないほど、彼女の瞳にはメラメラと復讐の炎が揺らいでいる。
「あのような男が一国の皇太子として存在していることすら、おぞましいのです……」
「ああ」
「顔も見たくありません。名前だって聞きたくない……」
「そうだな……」
「誰に対しても等しく祈りを捧げるべき聖女の心が、一人の男に対する復讐心で真っ黒に染まっているなど……あり得ないことだとわかっています。それでも、私は……」
「――フリジア」
言葉を詰まらせた彼女を勇気づけるかのように。
セドリックは両手で、フリジアの右手を優しく握りしめた。
それは彼女が誰にも言えずに、胸の奥底に沈めていた本心だ。
「私が受けた苦しみを味わわせるだけでは、満足できません……。自ら命を断つことのできない状態で、耐え難い苦痛を一生体感し続けてほしい……」
フェドクガに何をされたかまでを正直に打ち明ける勇気はなかったが、普段自信なさげに下を向いてばかりだったフリジアと同一人物など思えないほど、彼女の瞳にはメラメラと復讐の炎が揺らいでいる。
「あのような男が一国の皇太子として存在していることすら、おぞましいのです……」
「ああ」
「顔も見たくありません。名前だって聞きたくない……」
「そうだな……」
「誰に対しても等しく祈りを捧げるべき聖女の心が、一人の男に対する復讐心で真っ黒に染まっているなど……あり得ないことだとわかっています。それでも、私は……」
「――フリジア」
言葉を詰まらせた彼女を勇気づけるかのように。
セドリックは両手で、フリジアの右手を優しく握りしめた。