聖女のいない国に、祝福は訪れない
「決着をつけるのでしたら。私もその場に、同行させて頂けないでしょうか……」

 これはさすがに断られるかもしれないと、フリジアは不安そうに彼へ願い出た。

 聖女は癒やしの力を使えるだけの、か弱い人間だ。

 アーデンフォルカで暮らすようになってからは、先代の聖女と仲が良かった動物達が彼女を危機から救うために牙を剥くこともあるが、獣達の命が失われては困る。

 ――セドリックはフリジア、彼女は動物達。

 誰もが大事な人を失いたくないと考えている状況では、聖女の望みなど叶えられるはずがないと諦めていたのだが――。

「わかった」

 彼はあっさりと、フリジアの願いを受け入れた。

「いいのですか?」
「なんでも叶えると言ったからな」
「セドリック様……」
「約束を守らなければ、嘘つきになってしまう」

 彼女を安心させるように優しく微笑んだ彼は、フリジアを抱き寄せる。
 離れないように強く抱きしめられた彼女は、耳元で囁かれた言葉を受けて口元を綻ばせた。
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