聖女のいない国に、祝福は訪れない
「俺が君に向ける愛。それに嘘偽りはないと。少しでも感じ取れていればいいのだが……」

 フリジアは充分すぎるほどに、彼からの愛を受け取っている。

 それを口から言葉にして伝えるのは、今の彼女には難しかったが――。
 彼に身体を預けることで、信頼していると全身で訴えかけた。

(温かい……)

 セドリックのぬくもりを感じたフリジアは、今まで荒れ狂っていた気持ちが嘘のように薄れていくのを感じる。

 ――窓の外で降り注ぐ大粒の雨は、いつの間にか止んでいた。

「フリジア」

 返事をしたいのに、うまく言葉が出て来ない。

 泣きつかれた彼女は、彼の腕の中で眠りについた。
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