聖女のいない国に、祝福は訪れない
聖女を虐げた国に、祝福は訪れない
「フリジア」

 セドリックに声を掛けられたフリジアは、優しく微笑み彼を見つめる。

「準備はいいか」
「……いつでも」

 聖女と皇帝は手を取り合う。
 恨みを晴らすために。

(敵国の皇帝から、エスコートを受けるなんて……)

 ――二人が出会った当初は、考えられないことだった。

(殺されると思っていたのに……)

 母国で受けた扱いは酷いものだとフリジアの身を労り、何不自由なく過ごさせてくれた。
 聖女としてではなく、リエルル公爵家のフリジアとして接してくれた。

 それが聖女で居続けることを強要された彼女にとって、どれほど幸せなことであったのか――彼はきっと、気づいていないのだろう。

(私は陛下を守りたい……)

 彼女の願いは、祈りの力を強化した。

 十八歳の誕生日を迎えた直後からアーデンフォルカ帝国は聖女の加護に包まれ、徐々に先代聖女が生きていた時の光景を取り戻しつつある。

 このまま行けば、一月も立たな言うちに花々が咲き乱れる緑豊かな大地を見られるだろう。
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