聖女のいない国に、祝福は訪れない
――誰もが笑い合い、傷つくことなく幸福な世界を見届けるためにも。
自らの手で憎きあの男と決着をつけると決めたフリジアは、セドリックが生誕祭のためにと用意した深海色のドレスを身に纏い、馬車に乗って厶ガルデン王国に降り立った。
(酷い有様……)
聖女の加護を失ったからだろう。
草木は枯れ、小鳥の囀りすらも聞こえず、沼地のような土があたり一面に広がる。
振り続ける雨がより一層、ここは人の暮らす地ではないとフリジア達に訴えかけているようでもあった。
彼女はぼんやりと、王城に視線を向けた。
(半年ぶりか……)
アーデンフォルカにはいい印象しかないが、ここには悪い想い出しかない。
一刻も早く用事を済ませて愛すべき帝国へ戻りたいと態度で表すかのように、フリジアは腕を組むセドリックに寄り添った。
「ひ……っ! アーデンフォルカ帝国、セドリック陛下。リエルル公爵令嬢のご入場です!」
セドリックが招待状を差し出せば、悲鳴を上げた門番は会場へ続く扉を開く。
自らの手で憎きあの男と決着をつけると決めたフリジアは、セドリックが生誕祭のためにと用意した深海色のドレスを身に纏い、馬車に乗って厶ガルデン王国に降り立った。
(酷い有様……)
聖女の加護を失ったからだろう。
草木は枯れ、小鳥の囀りすらも聞こえず、沼地のような土があたり一面に広がる。
振り続ける雨がより一層、ここは人の暮らす地ではないとフリジア達に訴えかけているようでもあった。
彼女はぼんやりと、王城に視線を向けた。
(半年ぶりか……)
アーデンフォルカにはいい印象しかないが、ここには悪い想い出しかない。
一刻も早く用事を済ませて愛すべき帝国へ戻りたいと態度で表すかのように、フリジアは腕を組むセドリックに寄り添った。
「ひ……っ! アーデンフォルカ帝国、セドリック陛下。リエルル公爵令嬢のご入場です!」
セドリックが招待状を差し出せば、悲鳴を上げた門番は会場へ続く扉を開く。